静岡県湖西市がMyGPTsで議会答弁案の作成を従来の1/3の作業時間に短縮し、月間約100時間の業務削減を実現した事例です。 NTTコミュニケーションズの公開記事や複数の二次情報で確認できます。
「自治体の話だから関係ない」と読み飛ばすにはもったいないです。 中小企業の生成AI導入が止まる原因は、「汎用ChatGPTを配るだけで、業務に特化した形で配備しないこと」だからです。 湖西市はこの問題を、「MyGPTs(カスタムGPT)に答弁作成専用のナレッジを仕込む」という運用で解いている、と読めます。
僕が注目したのは、1/3短縮という数字ではなく、「ユーザーがChatGPTをカスタマイズできるMyGPTsを使い、用途ごとに関連データを参照させた」という設計思想です。中小企業の定型文書作成にそのまま応用できます。
定型文書作成業務の課題
決まった型の文書を量産する組織にありがちな構造はこうです。
- 過去の答弁・回答・契約書を毎回探しに行く時間が長い
- 担当者が変わると、過去資料の場所が分からなくなる
- 汎用ChatGPTに聞いても「一般的な答え」しか返ってこない
- 文書の品質が担当者の経験年数に強く依存する
汎用ChatGPTを配るだけでは、「自社/自部署のナレッジを踏まえた答え」は引き出せません。「ナレッジを仕込んだカスタムGPT」をテーマごとに作る必要がある、というのが湖西市の取り組みから読み取れる発想です。
静岡県湖西市の取り組み
NTT Com公式記事・二次情報で紹介されている内容は以下です。
- 対象: 静岡県湖西市役所の業務
- 基盤: 総合行政ネットワーク「LGWAN」経由でChatGPT利用
- キー機能: ユーザーがChatGPTをカスタマイズできる「MyGPTs」
- 用途:
- 議会答弁案の作成
- 庁内システムの操作問い合わせ
- 随意契約に関する問い合わせ
- 運用: 各用途ごとに関連データを参照させ、特定分野に特化した回答を出力
- 成果: 議会答弁案の作成業務 従来の1/3、月間約100時間の業務削減
つまり「汎用ChatGPT→特化型MyGPTsを業務ごとに作る」という運用で、生成AIを「業務に染み込んだツール」へ進化させています。
何が真似できるか
自治体特有のLGWAN要件はないですが、設計思想だけ抜き取るとこうなります。
- ChatGPTを「汎用チャット」のまま使わず、業務特化のカスタムGPTを作る
- カスタムGPTに「過去の答弁/契約書/マニュアル」を読ませる
- 1つのGPTに詰め込まず、用途ごとに別GPTを作る
- 月間削減時間を用途別に集計して、効果の高い用途から順に展開
特に「用途ごとに別GPTを作る」という割り切りが秀逸です。1つに全部詰め込むと精度が落ちるので、「答弁用」「契約用」「FAQ用」と分けるのが効きます。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。社員30〜200名の中小企業で同じ思想を取り入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | 静岡県湖西市 | 中小企業(社員30〜200名) |
|---|---|---|
| 対象 | 議会答弁・庁内問合・契約問合 | 提案書・FAQ・契約書・社内問合 |
| ツール | LGWAN経由ChatGPT+MyGPTs | ChatGPT Team(GPTs)or Microsoft Copilot Studio(月3,000〜4,500円/人〜、2026年4月時点。要最新価格確認) |
| 月額費用 | (公開なし) | 推定 月3〜30万円(利用者数×ライセンス) |
| 初期費用 | (公開なし) | 推定 30〜80万円(GPTs設計+ナレッジ整備) |
| 体制 | 情報政策担当+各課 | 総務+各部GPTs担当 |
| 期間 | 段階展開 | 3〜6ヶ月で3〜5個のGPTs運用化 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★★★ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIは高い。月100時間×時給=月20〜30万円規模のコスト削減
- 再現性は最高。ChatGPT TeamのGPTs機能で同じことができる
- 難易度は中。GPTs設計には「ナレッジを構造化して投入する」スキルが必要
前提条件・必要データ
- 過去の答弁・契約書・マニュアル等が電子ファイル化されている
- カスタムGPT/Copilot Studioを使えるライセンス契約がある
- ナレッジに含めていい情報/ダメな情報の仕分けルールがある
- 用途ごとに「使用前後の作業時間」を測れる担当者
失敗条件・適用しないケース
- 過去文書が紙のみ、または個人PCに散在している
- 1つのGPTに全部詰め込み、精度が落ちて使われなくなる
- 機密情報の混入チェックを省き、ナレッジに何でも入れる
- 削減時間を測らず「便利になった気がする」で終わる
「カスタムGPTを作ればAIが業務で使える」のではありません。
過去文書整備→ナレッジ構造化→用途別GPT設計→運用→削減時間計測、という5ステップが回って初めて、湖西市と同じ1/3短縮が中小企業にも見えてきます。
特に「用途別に分ける」設計を省くと、汎用GPTと変わらない精度になり、現場が使わなくなります。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
