PSソリューションズが、人事課・情報システム課・総務課・情報セキュリティ管理課の4部門に「with AXヘルプデスク」を展開し、業務種別ごとに最大95%の作業時間削減を実現した、という事例です。
「全社展開なんて中小じゃ無理でしょ」と思った方、ちょっと待ってください。 1部署ずつ、業務単位で削っていったら結果的に4部署になったというのが、プレスリリースを読んだ僕の解釈です。
僕が注目したのは、削減率の数字より「『触れる』『深める』『変える』の3ステップ」という展開フレームです。 中小企業がAIを社内展開するときに一番つまずくのが「全社一気に」のパターンで、ここを見逃すと丸ごと失敗します。
バックオフィス全社展開の課題
中小〜中堅企業のバックオフィスでよく起きる構造的な課題はこんな感じです。
- 人事・総務・情シス・情セキュなど、ナレッジ系業務が部門ごとに分散
- 各部門に「文書作成・規程整備・ガイドライン作成」の繰り返し業務がある
- 一度書けば終わりではなく、改訂・調整・追加がエンドレスに発生
- 一部のベテラン社員に「過去経緯」が属人化している
このタイプの業務は、量が多いわりに1件あたりの判断難易度はそこまで高くなく、 「過去資料を踏まえて新しいバリエーションを作る」が中心です。 生成AIが効きやすい領域ですが、4部門に同時導入はまず無理。順番が要ります。
with AXヘルプデスクをどう導入したか
PSソリューションズのプレスリリース(2025-09-25)で報告された構成は以下です。
- 対象: PSソリューションズの社内バックオフィス4部門
- 人事課
- 情報システム課
- 総務課
- 情報セキュリティ管理課
- ツール: with AXヘルプデスク(企業向けAIサービス)
- 展開フレーム: 「触れる」「深める」「変える」の3ステップ
ポイントは「3ステップで段階展開した」ことです。 触れる(まず使ってみる)→深める(業務に組み込む)→変える(業務プロセス自体を再設計)、という順番です。 この順番を飛ばして「いきなり業務改革」に行くと、現場が混乱して止まります。
削減数値の内訳と実態
プレスリリースで報告された主要な数値は以下です。
- 人事課: 求人票作成の作業時間を95%削減
- 情報システム課: 調査業務を25%効率化
- 総務課: 規程作成の作業時間を62%削減
- 情報セキュリティ管理課: ガイドライン作成を50%削減
- 全社展開の浸透率に向けた取り組みとして「触れる/深める/変える」の3ステップを実施
注意点として、これは業務種別ごとの削減率です。 人事課全体の業務が95%減ったわけではなく、「求人票作成」というピンポイントの作業の話です。 他部署も同様で、対象業務の粒度を読み違えると過剰期待になります。
それでも、4部門それぞれで2桁以上の削減数値が出ているのは、AIが効く業務を順番に切り出したからこそ、と読めます。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億・社員30名規模で、4部門展開モデルを真似するならどう削るか。
構成
| 項目 | PSソリューションズ | 中小企業(年商5億・社員30名) |
|---|---|---|
| 対象 | 4部門(人事/情シス/総務/情セキュ) | 管理部門+情シス兼任、合計2〜3名 |
| ツール | with AXヘルプデスク | Claude for Work / ChatGPT Enterprise(月3,000円/人〜、2026年4月時点。要最新価格確認) |
| 月額費用 | (非公開) | 推定 月1〜2万円(利用者3〜5名分、2026年4月時点) |
| 初期費用 | (非公開) | 推定 50〜100万円(プロンプトテンプレ整備+業務棚卸+教育) |
| 体制 | 全社展開推進チーム | 経営者+管理担当+外部支援月10時間 |
| 期間 | 段階展開(3ステップ) | 6〜12ヶ月で1部門ずつ拡張 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★☆☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高いのは、求人票・規程・ガイドラインなど「文書作成系の繰り返し業務」が直接削れるため
- 再現性は中程度。3ステップ展開を回す推進担当が必要
- 難易度は中程度。1部門ずつなら現実的だが、全社一気は無理
前提条件・必要データ
- 各部門が作成する文書(求人票・規程・ガイドライン等)のテンプレートが電子化されている
- 過去文書がデジタルで蓄積されている(参照元データになる)
- AI利用に関する社内ルールが策定済み、または策定可能
- 1部門ずつ展開する推進担当(兼任可)が置ける
失敗条件・適用しないケース
- 「全社員に一斉導入」を最初から狙う(必ず一部の部門で挫折する)
- 過去文書が紙のままで、AIが参照できる素材がない
- 「触れる」のステップを飛ばして、いきなり業務プロセス変更に行く
- 削減率の数字だけ見て、対象業務の粒度を確認しない
「with AXヘルプデスクを入れればバックオフィスが半減する」わけではありません。
1部門の文書作成業務を切り出す→AIで一次草案を作る→担当者がレビュー→他部門へ展開、の順番を踏んで初めて、PSソリューションズが見せた4部門展開の絵に近づきます。
特に「触れる」のステップを軽視しないことが、中小企業ほど大事です。 最初の3ヶ月は「数字を出すこと」より「現場が触ること」を目標に置いたほうが、結果的に早く回り始めます。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
