フリーランスデザイナーが、提案制作にAIを連携させて時間を15時間→4.5時間(70%削減)に短縮し、月の受注件数を1.8倍に増やした、という事例です。
注目したいのは、削減率より「4種類のAIを役割分担」という設計です。 1つのAIで全部やろうとせず、ChatGPTでヒアリング整理、Midjourney+Figmaでラフ生成、Claudeで提案文構成、と分けて使っているところに学びがあります。
「うちは個人デザイナーじゃないし」と読み飛ばしそうですが、年商5億規模の制作会社・広告代理店の現場でも、提案資料の作り方は本質的に同じ構造です。
提案制作の課題
フリーランスデザイナーの現場で起きていた課題は、こういう内容です(SOKUDAN magazine)。
- 提案資料1本の制作に15時間かかる
- 並行案件数が増えると、提案フェーズで時間が枯れる
- 受注前の作業なので、報酬が出ない時間が膨らむ
- 結果として「並行できる案件数」が頭打ちになる
中小の制作会社・広告代理店でも、提案フェーズの工数が回らないのは同じ構造です。 人を増やせば解決するけれど、提案フェーズは案件化しないと売上にならないので、固定費を増やしにくい領域です。
AI連携をどう導入したか
ワークフローの構成は以下です。
- ヒアリング整理: ChatGPT(クライアント要件の構造化、抜け漏れチェック)
- ラフ生成: Midjourney + Figma連携(画像生成→レイアウト反映)
- 提案文章: Claude(文章構成・トーン調整)
- 対象業務: クライアント提案資料の制作
ポイントは「1工程1AI」の役割分担です。 ChatGPTにラフ生成を頼んだり、Midjourneyに文章を書かせたりしないで、各AIの得意領域に絞って使っています。
「全部1つのAIで済ませたい」という発想は一見楽そうですが、結局どのAIも器用貧乏になるので、分けたほうが質も速度も上がります。
70%削減の内訳と実態
報告された主要な数値は以下です。
- 提案制作時間: 15時間 → 4.5時間(約70%削減)
- 月の受注件数: 1.8倍に増加
- 使用ツール: ChatGPT / Midjourney / Figma / Claude
注意点として、これはフリーランスデザイナー個人の体感値です。 組織で同じ効果を出すには「ワークフローのマニュアル化」と「ツール費用の按分」が必要なので、個人の数値そのままはコピーできません。
また、Midjourneyの出力をそのまま提案に使えるかは、クライアントの業界(医療・法務など規制が厳しい領域)によって制約があるので、業界ごとの判断が必要です。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億規模の制作会社・広告代理店で同じ思想を入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | フリーランス事例 | 中小制作会社(年商5億・社員30名) |
|---|---|---|
| 対象 | 個人1名 | デザイナー2〜3名+営業1〜2名 |
| ツール | ChatGPT / Midjourney / Figma / Claude | 同左セット(月額合計5,000〜1万円/人、2026年4月時点。要最新価格確認) |
| 月額費用 | 推定 月3,000〜8,000円(個人) | 推定 月2万〜5万円(5名分、2026年4月時点) |
| 初期費用 | ほぼゼロ(個人で試行錯誤) | 推定 30〜100万円(ワークフロー設計・社内研修) |
| 体制 | 本人1人 | デザイナー+営業の協働、外部支援月5時間 |
| 期間 | 数ヶ月で習熟 | 1〜3ヶ月でPoC→本格運用 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★★ |
| 再現性(中小企業) | ★★★★☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高いのは、提案制作の工数削減が受注数増(=売上増)に直結しやすいため
- 再現性が高めなのは、ツール群がすでに普及しており導入障壁が低いため
- 難易度は中程度。4ツールの使い分けと、業界・クライアント別のテンプレ整備が必要
前提条件・必要データ
- デザイナーが提案フェーズに月10時間以上関わっている
- 過去の提案資料が10件以上保存されており、テンプレ化の素材がある
- クライアントが「AI生成画像の提案使用」を許容する業界
- デザイナー本人が新ツール学習に2〜4週間使える時間的余裕がある
失敗条件・適用しないケース
- 1つのAIで全部やろうとして器用貧乏になる
- AIの出力をそのまま提案に出して、ブランド監修工程を省略する
- 提案テンプレが整っていない状態で、AIに毎回ゼロから書かせる
- クライアントが医療・金融・法務など規制業界で、AI生成物の使用に制約がある
「ChatGPTを契約すれば提案が3分の1になる」わけではありません。
ヒアリングのテンプレ整備→工程ごとのAI使い分け→出力チェック工程の設計→クライアント業界別の運用ルール、という4ステップを踏んで初めて、組織として再現できる体制になります。
最も削れるのは「下書き作業」であって、「考える工程」と「最終チェック」は残ります。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
