社労士の荻生氏(荻生労務研究所)が、ChatGPT等の生成AIを使って就業規則ドラフト・労務相談の一次回答・議事録整形を実務に組み込んだ、という事例です。
大企業の法務DXではなく、「一人社労士が自分の日常業務をちょっと削った」記録です。
だからこそ、士業事務所・中小企業の管理部門にダイレクトに効きます。
規模の大きな話は真似できなくても、1人の実務を削る話なら、うちでも試せる。
僕が注目したのは「一次対応だけ削る」という思想です。
全部AIに任せると精度の壁にぶつかりますが、ここで書かれているのは「AIでドラフト→人間が最終チェック」の現実解です。
社労士・士業事務所の課題
個人〜中小規模の士業事務所には、こんな見えにくいコストがあります。
- 就業規則ドラフトは毎回、既存雛形のコピペ+修正に半日〜1日
- 顧問先からの労務相談は質問の8割が典型パターンだが、毎回ゼロから回答を書く
- 顧問先ミーティングの議事録整形に1〜2時間
- 典型パターンの回答に時間を取られて、難易度の高い案件に集中できない
「ドラフト作業=2〜3時間×週3件」で年300時間近い固定費。
個人事務所の場合、これが受任可能件数そのものを縛っています。
顧問先を増やしたくても、ドラフト作業の物理的な時間で頭打ちになる構造です。
ChatGPTをどう業務に組み込んだか
元記事(note)で紹介されている構成は以下です。
- 対象業務: 就業規則ドラフト / 労務相談の一次回答 / 議事録整形
- ツール: ChatGPT等の生成AI
- 使い方: 業務ごとにプロンプトを分けて使い分け
- 運用方針: AIでドラフト → 社労士が最終チェック → 顧問先に提出
就業規則なら「条文の雛形 + 顧問先の業態情報」を投げてドラフト生成。
労務相談なら「質問テキスト + 関連法令」を投げて一次回答を生成。
議事録なら「録音テキスト」を投げて構造化整形。
共通するのは「AIで0→7を作って、社労士が7→10に仕上げる」運用です。
個人事務所で出た効果
元記事の報告では、以下の効果があったとされています。
- 一次対応時間の大幅な短縮
- 顧問先対応の密度向上(浮いた時間で深い相談に集中)
- 個人事務所でも再現可能な運用法として公開
- 業務ごとにプロンプトが分離されているので他の社労士にも移植しやすい
注意点として、これは個人事務所の実務体感値であり、すべての士業事務所で同じ効果が出るとは限りません。
「ChatGPTを開けば労務が楽になる」ではなく、「プロンプトを業務別に整備して、最終チェックを社労士が担う」運用があってこその効果です。
中小企業・士業で再現するなら
ここからが本題です。士業事務所や中小企業の管理部門で同じ思想を取り入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | 荻生労務研究所元事例 | 士業事務所 or 中小企業管理部(社員30〜100名) |
|---|---|---|
| 対象 | 社労士1名 | 士業1〜5名 or 管理部1〜3名 |
| ツール | ChatGPT(Plus以上推奨) | ChatGPT Team or Claude Team(2026年4月時点) |
| 月額費用 | 数千円 | 推定 月5,000〜30,000円(人数分、2026年4月時点) |
| 初期費用 | ほぼゼロ | 推定 10〜30万円(プロンプト整備・業務別テンプレ化) |
| 体制 | 本人1名 | 士業/管理部担当 + 外部伴走 月3〜5時間 |
| 期間 | 数週間でPoC | 4〜6週間でPoC→運用開始 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★★ |
| 再現性(中小企業) | ★★★★★ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★☆☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIは非常に高い。月額数千円で週単位の時間を買い戻せる
- 再現性は非常に高い。就業規則・労務相談・議事録の構造はどこでも共通
- 難易度は低め。ChatGPTの基本操作とプロンプト整備ができれば届く
前提条件・必要データ
- 業務で扱う文書の雛形が一定量ある(就業規則・契約書・議事録テンプレ等)
- 業務ごとの「AIに投げていい情報」「投げてはいけない情報」の線引きができる
- 顧問先・顧客の機密情報の扱いに関するポリシーが整備されている(または整備する意志がある)
- 最終成果物を人間がチェックする運用を維持できる
失敗条件・適用しないケース
- 顧問先の機密情報を無造作にAIへ投げてしまう体制
- 「AI生成ドラフトをそのまま納品」してチェック工程を省く
- プロンプトを整備せず、毎回ゼロから書いて結果にムラが出る
- 個人情報・マイナンバー等を学習される前提のツールに入れる
「ChatGPTを使えば社労士業務が自動化される」わけではありません。
業務の棚卸し→プロンプト整備→情報の扱いルール策定→AIでドラフト→人間が最終チェック、という5ステップを踏んで初めて、一次対応時間の圧縮が見えてきます。
ツールだけ入れて機密情報ルールが曖昧だと、むしろリスクが増えるので注意です。
出典・参考
市野
「うちも士業事務所/管理部門で生成AIを入れたいけど、機密の扱いが不安」という方は、
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営業はしません、純粋にケース壁打ちです。
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愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。
中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
