株式会社学情がMicrosoft 365 Copilotを全社展開し、導入3ヶ月で5,004時間・1,305万円のコスト削減、アクティブユーザー率100%を達成した、という事例です。
「Copilot入れました」で止まる会社は多いですが、学情はトレーニングを6回・各回200〜250名で回して、全員に触らせるところまでやり切っています。 数字より、そのプロセス設計のほうがマネできる部分だと思います。
僕が注目したのは、時間削減の総量ではなく「アクティブユーザー率100%」という結果です。 Copilotは月額数千円/人のツールなので、使わない人が半分いれば、それだけで投資回収がずれ込みます。
全社展開の課題
人材情報サービスは、社内でメール・Teams・提案書のやり取りが膨大に発生する業種です。 その中でよくある構造的な課題はこんな感じです。
- 事業拡大に伴ってメール・Teams・ドキュメントが爆発的に増える
- 情報の整理・要約に時間を取られ、商談準備が後回しになる
- 部門ごとに使い方が違い、全社ノウハウが溜まらない
- ツールを入れても「使う人だけ使う」状態で終わる
Copilotのようなライセンス型AIツールは、契約者数×月額料金がまるっと固定費として乗ります。 だから「アクティブ率」を上げないと、ROIが崩れる構造です。 学情がまず取り組んだのは、まさにこの「使わせ切る」の設計でした。
Microsoft 365 Copilotをどう導入したか
Microsoft公式事例(2026年掲載時点、確認日2026-09-03)の範囲では、以下の構成です。
- 対象: 株式会社学情(人材情報サービス)全社
- ツール: Microsoft 365 Copilot、Teams、Outlook、Dynamics 365、Microsoft Copilot Studio(今後活用予定)
- 導入時期: 2025年2〜4月に本格運用(試行段階はそれ以前)
- トレーニング: 6回に分けて各回200〜250名参加、基本概念から実務ケースまで
- 教材: プロンプト集、部門別ユースケース資料、新入社員・中途採用者向けハンズオン
ポイントは「トレーニングを回数と規模で刻んだ」ところです。 全社1回のキックオフで終わらず、6回×200〜250名という設計で、部門ごとの温度差を埋めています。
プロンプト集と部門別ユースケース資料も、社内の使い方を「型」に落とすためのもの。 Copilotの機能そのものより、周辺の「使い方コンテンツ」を用意したことが、アクティブ率100%につながっています。
5,004時間削減の内訳と実態
Microsoft公式事例で報告された主要な効果は以下です。
- 業務時間削減: 5,004時間(2025年2〜4月の3ヶ月間)
- コスト削減: 1,305万円
- アクティブユーザー率: 100%(全社員が何らかの用途で利用)
- 主な用途: Teamsの会議要約、Outlookのメール要約・下書き、Dynamics 365上での営業データ活用
注意点として、5,004時間は「削減された作業時間の合計」であり、 「Copilotが5,004時間の業務を代替した」わけではありません。 Teams会議の要約・メール下書き・情報検索など、細かい時短が全社で積み上がった結果です。
コスト削減額(1,305万円)も、削減時間を人件費単価に置き換えた試算値と読むのが自然です。 自社に当てはめる時は、同じ計算式(削減時間 × 平均時給)で自社数値を出して比較したいところです。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億規模で同じ思想を取り入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | 学情(全社展開) | 中小企業(年商5億・社員30名) |
|---|---|---|
| 対象 | 全社員 | 全社員 or 商談準備が多い部署(営業・企画・広報) |
| ツール | Microsoft 365 Copilot + Teams/Outlook/Dynamics 365 | Microsoft 365 Copilot(月額約4,500円/人〜、2026年9月時点。要最新価格確認) |
| 月額費用 | (非公開) | 推定 月13.5万円(30名分・2026年9月時点) |
| 初期費用 | 推定内製 | 推定 30〜80万円(トレーニング設計・プロンプト集整備・部門別ユースケース資料作成) |
| 体制 | 情シス+各部門推進担当 | 情シス兼務1名+外部支援月5〜10時間 |
| トレーニング | 6回×200〜250名 | 3回×全社員(部門別に分割)、各回1時間 |
| 期間 | 2025年2〜4月に本格運用 | 3ヶ月でPoC→全社展開 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★★☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★☆☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高いのは、Microsoft 365を既に契約していれば追加ライセンスだけで済むため
- 再現性が高いのは、TeamsとOutlookが既に社内にあれば導入摩擦が少ないため
- 難易度は低め。ツール導入自体は簡単だが、アクティブ率を上げるトレーニング設計が肝
前提条件・必要データ
- Microsoft 365(E3以上または該当プラン)を既に社内で利用している
- 会議・メール・ドキュメント作成が業務のかなりの割合を占めている
- 情シスまたは推進担当が月10時間程度の社内展開に動ける
- 「プロンプト集」「部門別ユースケース」を作れる推進担当が1人はいる
失敗条件・適用しないケース
- Microsoft 365ではなくGoogle Workspaceを主に使っている(Copilotの効果が乗らない)
- 情報の大半が紙・手書き・現場作業で、Officeドキュメント量が少ない
- トレーニングを1回のキックオフで終わらせ、フォローアップをしない
- 「全員に配れば勝手に使う」と期待して、ユースケース資料を整備しない
「Copilotを入れれば全社の生産性が上がる」わけではありません。
ライセンス配布→部門別ユースケース資料整備→複数回トレーニング→アクティブ率モニタリング→未使用者への個別フォロー、という5ステップを踏んで初めて、学情のようなアクティブ率100%が見えてきます。
ここで一番削れないのは、推進担当の時間と、トレーニング教材づくりの手間です。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
