【その他×バックオフィス】アイニコグループが生成AIで年1368時間削減した話

アイニコグループが生成AIをバックオフィス全領域に展開し、年1368時間の業務時間削減を達成した、というITmediaビジネスオンライン記事(2026-02-17公開)の事例です。

「年1368時間って大企業の話でしょ」と思った方、ちょっと待ってください。 記事を読むと、2024年8月に「AI相談室」を開設→10月に「AI活用プロジェクト」発足という、社内の小さな相談窓口から始まった段階的な広げ方になっています。 中小企業の現場でも参考にしやすい立ち上げ方です。

僕が注目したのは、いきなり全社プロジェクトではなく、先に「相談室」を置いた順序です。 現場の質問を受け止めるハブを作ってから、プロジェクト化に進んでいる。 ここは中小規模での再現性が高いやり方です。

中小企業のバックオフィスで起きる構造

中堅・中小企業のバックオフィス業務では、こんな構造的な摩擦が起きています。

  • 経理・人事・総務の各部門で似た作業を別々にやっており、横展開が利かない
  • 「AIを使えば早くなる」と分かっていても、誰がどう試すかの導線がない
  • 単発で勉強会をやっても、現場の業務に落ちずに終わる
  • 「分からないときに聞ける場所」がないので、興味を持った社員も止まる

このタイプの停滞は、ツール不足ではなく社内に質問を吸収するハブがないことから生まれています。 アイニコグループが最初に「相談室」を置いた理由は、ここに対する処方箋として読めます。

アイニコグループのAI活用ステップ

公開情報(ITmedia、2026-02-17)で報告されている経緯は以下です。

  • 2024年8月: 社内に「AI相談室」を開設(現場の質問・相談を受ける窓口)
  • 2024年10月: 「AI活用プロジェクト」がスタート(全社的な活用推進体制へ)
  • 対象領域: バックオフィス業務全般
  • 使用ツール: Google Workspace等の業務環境に生成AIを組み合わせる構成
  • 成果: 年1368時間の業務時間削減

ポイントは「相談室→プロジェクト→全社展開」と段階を踏んでいるところです。 最初の2ヶ月で相談室が現場の質問を吸い上げて、ニーズが見えたタイミングでプロジェクト化している。 順序が逆だと、プロジェクトが「現場の課題を知らないまま走る」状態になりがちです。

1368時間削減の中身を冷静に見る

公開情報で確認できる主要な数字は「年1368時間の業務時間削減」です。 分かりやすい数字なので一人歩きしやすいですが、内訳を整理すると以下の関係です。

  • 1368時間/年 ÷ 12ヶ月 = 月114時間
  • 1人の月稼働(所定160時間前後)で換算すると、月0.7人分の工数解放に相当
  • バックオフィス領域全体での累計値であり、一部署の集中効果ではない

注意点として、「どの業務に何時間効いたか」の細分内訳は、公開情報の範囲では明示されていません。 ですので「同じツールを入れれば同じ時間が浮く」とは読まないほうが安全です。 どの業務に振り分けるかは、自社のバックオフィス工数構造に依存します。

「1368時間削減」というラベルだけ持ち帰るのではなく、相談室を起点にした段階的な広げ方こそが再現価値の本体だと思います。

中小企業で再現するなら

ここからが本題です。社員30〜100名規模の中堅・中小企業がこの取り組みを真似するならどう削るか。

構成

項目 アイニコグループ 中堅・中小企業(社員30〜100名)
対象 バックオフィス全領域 まず経理 or 人事の1領域から開始
ツール Google Workspace+生成AI(詳細は公開情報の範囲) Google Workspace or M365(月数千円/人〜)+ ChatGPT/Geminiビジネス契約(2026年4月時点、要最新確認)
月額費用 (公開情報なし) 推定 月3,000〜8,000円/人(2026年4月時点、要最新価格確認)
初期費用 (公開情報なし) 推定 50〜200万円(相談窓口設計+研修+運用ルール整備)
体制 AI相談室→AI活用プロジェクト 兼任の相談役1〜2名→部門横断プロジェクト化
期間 相談室開設(2024年8月)→プロジェクト発足(2024年10月) 相談窓口を2〜3ヶ月運営→部門横断化

評価軸スコア

評価軸 スコア
ROI(投資対効果) ★★★★☆
再現性(中小企業) ★★★★☆
難易度(低いほど簡単) ★★★☆☆

(難易度=数字小さいほど簡単)

スコア根拠は以下です。

  • ROIは高め。バックオフィス工数の削減はそのまま採用余力・残業圧縮に直結する
  • 再現性は高い。「相談室→プロジェクト」の段階導入は中小規模でも組みやすい
  • 難易度は中程度。相談役を担う人材の確保と、現場ヒアリングの継続が必要

前提条件・必要データ

  • バックオフィス各部門の月次工数(誰が何にどれくらい時間を使っているか)が把握できる
  • 兼任でもいいので「AIに関する質問の窓口」を担える社員がいる
  • Google WorkspaceまたはM365が既に導入済み、もしくは導入余地がある
  • 経営層が「数ヶ月単位の継続運用」にコミットしている

失敗条件・適用しないケース

  • 相談室を飛ばしていきなり全社プロジェクトを立ち上げる
  • 削減時間の目標値だけを設定し、どの業務を対象にするかを決めずに走る
  • 兼任相談役が他業務に追われて、相談対応が形骸化する
  • 「年1368時間削減」という他社数字だけを目標に置き、自社の工数構造を測らない

「Google Workspaceに生成AIを組み合わせれば年1368時間浮く」と読んではいけません。

相談室開設→現場ヒアリングの蓄積→プロジェクト化→領域拡大、の順序を数ヶ月かけて踏んで初めて、アイニコグループが到達した位置に近づきます。

特に「先に相談室を置く」という1点だけでも、中小企業が真似する価値があると思います。 プロジェクトを立ち上げる前に、現場の質問を吸い上げるハブを作る。順序の話ですが、ここで成否が分かれます。

出典・参考


市野

市野

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愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。

市野 佑馬
執筆メンバー 市野 佑馬

愛知県岡崎市を拠点に、中小企業向けのAI活用支援を提供。ChatGPT・Claude Code等を活用した業務自動化やSEO・広告運用の内製化を支援。経営者が自らAIを使いこなせる体制づくりをサポートしている。

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