中小運送業の配車業務にAI配車サービス「Loogia」を入れて、月およそ280時間の労働時間を削減した、という事例です。
「配車AIなんて大手の話でしょ」と思った方、ちょっと待ってください。 元記事の中身を読むと、配車係1名+ドライバー6名という小規模チームでの導入です。 年商数億円規模の地域運送会社で、十分に手が届く話になっています。
僕が注目したのは、280時間という数字そのものより「配車係1人の属人化を外せたこと」です。 2024年問題で現場が限界に近づく中、ベテラン1人が倒れたら止まる構造を解きほぐすところに、本当の価値がある気がしています。
配車業務の課題
中小運送・地域倉庫で、配車・運行まわりによく起きている構造的な問題は、こんな感じです。
- 配車組みがベテラン配車係の経験則に依存している
- ドライバー不足で、1人あたりの運行時間が逼迫
- 2024年問題(時間外労働上限規制)で、同じ荷量を少ない時間で捌かないといけない
- 配車係が休むと業務が止まる
配車業務は「地理勘・顧客の癖・ドライバー適性」が複雑に絡むので、 AI化が難しいと言われてきた領域です。
ただここ数年で、ルート最適化アルゴリズム+制約条件の設定で、 ベテラン配車係に近い計算をサービス側が肩代わりしてくれるようになっています。
Loogiaをどう導入したか
元記事(システム開発革命、2026-05-10公開)で紹介されている構成は、以下のとおりです。
- 対象企業例: 前田鐵鋼ほか(記事内では5社の物流AI事例を横断紹介)
- ツール: Loogia(オプティマインド社のAI配車クラウド)
- 対象業務: 配車計画の自動立案・ルート最適化
- 運用規模: 配車係1名+ドライバー6名のチーム
同じ記事では、他にも以下のパターンが紹介されています。
- タキザキロジスティクス: 50〜60件のルート計算を数分に短縮
- 相模石油: 配送台数を4台→3台に削減
- 京葉流通倉庫: AMR20台で「歩かない倉庫」化
- 三共運輸: デジタコ+AI分析で安全運転評価
配車の最適化だけでなく、倉庫側でもAMR(自律走行搬送ロボット)+AI制御の組み合わせがSaaS型で広がっている、という流れです。 買い切りでロボットを導入する時代から、必要区画だけ段階導入する時代に移っています。
月280時間削減の内訳と実態
元記事で報告された数値は以下です(出典: システム開発革命、2026-05-10)。
- 労働時間削減: 月およそ280時間
- 内訳: 配車係1名が1日あたり約2時間短縮、ドライバー6名も1日あたり約2時間の配送時間短縮
- 配車係1名+ドライバー6名の小規模体制で成立
計算の目安としては、1日2時間×7名×稼働20日≒280時間、という構造です。 配車係だけでなくドライバー側の運行時間も削れているところが、2024年問題対策として効いています。
注意点として、これは「Loogia単体の魔法」ではありません。 導入前にマスタ整備(顧客・納品先・車種・制約条件)が済んでいるからこそ、計算結果がそのまま使える、という前提があります。
マスタが乱雑なまま入れても、AIが出した配車計画を人間が全部直す、という本末転倒が起きます。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億規模の地域運送・倉庫でこれを真似するならどう削るか。
構成
| 項目 | 元事例 | 中小企業(年商5億・運送または倉庫10〜20名) |
|---|---|---|
| 対象 | 配車係1名+ドライバー6名 | 配車係1〜2名+ドライバー5〜15名 |
| ツール | Loogia(オプティマインド) | Loogia等の配車SaaS(2026年時点、価格は要見積・公式問い合わせ) |
| 月額費用 | (個別見積) | 推定 月5万〜20万円(規模・車両台数に応じ変動、2026年10月時点のベンダー公開情報からの推定) |
| 初期費用 | 推定100〜300万円(マスタ整備・設定支援含む、公開情報なし) | 推定50〜200万円(マスタ整備+オンボーディング) |
| 体制 | 配車係本人+ベンダー支援 | 既存配車係+外部支援月5〜10時間 |
| 期間 | (非公開) | 2〜4ヶ月でPoC→本格運用 |
価格は公開情報が限定的なため、必ずベンダーに見積依頼してください。
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★☆☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★☆☆ |
(難易度=数字が小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高いのは、配車係の工数削減がそのまま残業削減・採用難緩和につながるため
- 再現性は中程度。マスタ整備・制約条件の言語化という下ごしらえが必須
- 難易度は中程度。SaaS導入とはいえ、既存の配車ロジックを棚卸しする工程がいちばん重い
前提条件・必要データ
- 顧客・配送先・納品時間指定・車種・ドライバーの運行条件がマスタ化できる(エクセルでも可)
- 1日の配車件数が目安で20件以上(少なすぎると人間でも組めてしまう)
- 配車係が「自分の判断基準」を言語化することを嫌がらない
- 現場スマホで配車結果を受け取る運用に移行できる
失敗条件・適用しないケース
- 配送先・時間指定が毎回イレギュラーで、マスタ化できない
- 配車件数が1日数件レベル(自動化メリットが出ない)
- 配車係が「俺の勘を否定するな」でSaaSの計算結果を受け入れない
- SaaS側のサポート範囲外の特殊条件(危険物・冷蔵・多温度帯等の複雑制約)がメイン業務
「Loogiaを入れれば配車が280時間削れる」わけではありません。
マスタ整備→制約条件の言語化→配車SaaSで計算→配車係が最終承認してドライバーに配信、という4ステップを踏んで初めて、現場で回る体制が見えてきます。
いちばん効くのは「配車係1人の頭の中」を外に出すことです。 その作業自体が、2024年問題への最大の備えになります。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
