株式会社給与アップ研究所が、Claude Codeを活用した人事評価制度の提案手法を体系化し、30名規模の企業で月116時間の評価業務削減を試算した、という事例です。
「中小×人事評価×AI」は僕の主戦場ど真ん中なので、このリリースが出たときは熟読しました。 派手な数字に見えますが、実態は「試算」であり、運用済みの実績ではない点には触れておきます。 それでも、評価業務のどこをAIに渡せるかを切り分けた構成は、十分に参考になります。
僕が注目したのは「月116時間」の数字より、業務を継続・圧縮・移管・廃止の4分類で仕分けたところです。 ここをやらずにツールだけ入れると、どこを削れるのか曖昧なまま予算だけ消えます。
中小企業の人事評価の課題
中小企業の人事評価制度には、こんな構造的な問題があります。
- 評価設計・運用が属人化していて、毎期ベテランの工数が消える
- 評価シミュレーション・面談準備・査定理由の文章化に膨大な時間が掛かる
- 人手不足の中で給与アップの原資を捻出したいが、評価業務に追われて改善まで手が回らない
- 評価制度を整えたいが、専任の人事担当を置く余裕がない
「評価制度を作りたい」と相談を受けても、まず運用工数を削るところから入らないと、制度設計の議論まで到達しません。 削減対象として地味ですが、評価業務は四半期・半期ごとに必ず発生する積み上げコストなので、ここを削れると経営の選択肢が増えます。
Claude Codeをどう組み込んだか
元リリース(PR TIMES、給与アップ研究所、2026-04-18)で報告された構成は以下です。
- 対象業務: 人事評価制度の設計・運用支援
- ツール: Claude Code(生成AI活用)+ 自社のジョブオペ®手法
- 対象業務範囲:
- 評価シミュレーション
- 面談支援(面談台本・想定問答の作成)
- 査定理由の文章化
- アプローチ: 業務を「継続・圧縮・移管・廃止」の4分類で仕分け、圧縮・移管領域をAI化
ポイントは、全部をAIに任せる発想ではないことです。 評価そのもの(=継続)は人間が判断し、文章化や事前準備(=圧縮・移管)をAIに渡しています。
人事評価は「速く処理すること」より「納得感を作ること」が重要なので、 ここを外すと「AIが査定した」と現場に受け取られて、評価制度の信頼が崩れます。 あくまで担当者を補助する位置付け、という設計です。
月116時間削減の内訳と実態
リリースで報告された主要な数値は以下です。
- 削減効果: 30名規模企業で月116時間の評価業務削減を試算
- コスト換算: 年換算で約417万円のコスト削減試算
- 削減率: 約66%
- 外販: AI人事評価コンサルタント認定講座として体系化
注意点として、これは 試算値 であり、特定の運用クライアントで実測された数字ではありません。 30名規模の標準モデルでシミュレーションした結果として読むのが正確です。 「導入すれば必ず116時間削減できる」と読むと事故るので、ここは冷静に扱いたいところです。
それでも、評価業務を4分類で仕分けてAI化範囲を明示した点は、中小企業の経営者にとって判断材料になります。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億規模・社員30名の会社で同じ思想を取り入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | 給与アップ研究所モデル | 中小企業(年商5億・社員30名) |
|---|---|---|
| 対象 | 30名規模の評価業務 | 経営者+人事兼任1名 |
| ツール | Claude Code + ジョブオペ®手法 | Claude Code Max Plan(月3,000円/人〜、2026年6月時点。要最新価格確認) |
| 月額費用 | (非公開) | 推定 月3,000〜6,000円(担当者1〜2名分、2026年6月時点) |
| 初期費用 | (認定講座経由) | 推定 30〜80万円(評価制度の現状棚卸し+業務4分類仕分け+プロンプトテンプレ整備) |
| 体制 | コンサル支援 | 経営者+人事担当+外部支援月5〜10時間 |
| 期間 | (講座+導入) | 2〜3ヶ月でPoC→運用開始 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★★☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★☆☆ |
(難易度=数字小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高めなのは、評価業務が四半期・半期で必ず発生する積み上げコストのため、削減効果が継続しやすい
- 再現性が高めなのは、30名前後の規模が中小企業の代表的なボリュームゾーンと重なるため
- 難易度は中程度。AIの使い方より「評価観点の言語化」と「現場の納得感づくり」の方が難しい
前提条件・必要データ
- 評価項目・等級制度のたたきが、暗黙知でなく言語化されている(または言語化する意思がある)
- 過去の面談記録・査定理由の文書が一定量残っている
- 経営者または人事担当が、AIを使った業務見直しに腹落ちしている
- 「全自動評価」ではなく「補助ツール」として位置付けられる
失敗条件・適用しないケース
- 評価基準が経営者の頭の中にしかなく、明文化を嫌がる
- 「AIが査定したから人間判断は省略」にしようとする(現場の信頼が崩れる)
- 評価制度そのものが機能しておらず、運用ルールが曖昧
- 機密性の高い人事情報の取り扱いルールが整理されていない
「Claude Codeを入れれば人事評価が月116時間軽くなる」わけではありません。
業務の4分類仕分け→評価観点の言語化→プロンプト設計→Claude Codeで圧縮・移管領域を処理→人間が最終判断、という5ステップで初めて、中小企業の現場で運用に乗ります。
特に「業務4分類の仕分け」を飛ばすと、どこを削っているのか説明できないまま、ツール費だけが先に走ります。 順番だけは守りたいところです。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。

