人材派遣・紹介のヒューマンリソシアが、求人広告文の作成を「つなぎAI」(Dify+WinActor)で自動化し、年4,800時間の業務削減を達成した、という事例です。
「マッチングAIの話?」と思った方、ちょっと待ってください。 この事例は求職者と求人のマッチングではなく、求人広告文の作成が主役です。 コーディネーターが毎件20分かけて書いていた原稿を、AIで14分に短縮した、という地味だけど効く話です。
僕が注目したのは「月4,000件の繰り返し業務にAIを差し込んだ」設計です。 派手な変革ではなく、件数の多い定型業務に絞ったので、削減時間が積み上がりました。
求人広告制作の課題
人材紹介・派遣の現場では、求人広告まわりにこんな構造的な課題があります。
- 月数千件規模の求人原稿を、コーディネーターが手作業で書いている
- 1件あたり20分かかると、月数千時間がここに消える
- 求人票の元データから「広告文」に翻訳する工程が属人化している
- AIで自動化したいが、社内システムとの接続まで含めると一気に難易度が上がる
求人原稿は「件数が多い」「形が決まっている」「品質基準がある」業務です。 一見ITで効率化済みに見えますが、最後の「広告として読ませる文章にする」部分が手作業で残っているケースが多いところです。
「つなぎAI」をどう導入したか
一次情報(ヒューマンホールディングス プレスリリース、2026-01-15)の範囲では、以下の構成です。
- 対象業務: 求人広告文の作成(月約4,000件)
- ツール: 「つなぎAI」(Dify上で構築) + RPA WinActor
- 処理フロー:
- 求人元データをRPAで取り込む
- Difyで構築した生成AIワークフローが広告文の下書きを生成
- コーディネーターが内容を確認・調整して入稿
- 適用範囲: ヒューマンリソシアの求人広告作成業務全般
ポイントは「生成AIだけでなくRPAをセットにした」ところです。 生成AI単体だと「データを貼って、結果をコピーして」の人手が残ります。 RPAでデータ取込と入稿を挟むことで、コーディネーターは「下書きをチェックする」工程に集中できる設計になっています。
年4,800時間削減の内訳と実態
プレスリリースで報告された主要な数値は以下です。
- 対象件数: 月約4,000件の求人原稿
- 1件あたり所要時間: 約20分 → 約14分(約3割短縮)
- 年間削減時間: 約4,800時間
- 背景: 年16,000時間規模を費やしていた工程を圧縮
注意点として、これは「広告原稿1件にかかる時間が約3割減った」という意味の数字です。 コーディネーターの全業務が3割減ったわけではないので、そこは冷静に読みたいところです。
「つなぎAI」が下書きを作っても、最終チェック・調整・入稿は人間が担います。 生成AIで全自動化、ではなく、人間の作業を集中させる先を変えた事例として読むのが正解です。
中小企業で再現するなら
ここからが本題です。年商5億規模・社員30名の人材・派遣・採用代行企業で同じ思想を取り入れるならどう削るか。
構成
| 項目 | ヒューマンリソシア | 中小企業(年商5億・社員30名) |
|---|---|---|
| 対象 | 月4,000件の求人原稿 | 月200〜500件規模の定型文書(求人原稿・物件文・商品説明等) |
| ツール | 「つなぎAI」(Dify)+WinActor | Dify(月公式プラン要確認)+RPAツール(WinActor等) |
| 月額費用 | (非公開) | 推定 月3〜10万円(Difyプラン+RPAライセンス、2026年4月時点。要最新価格確認) |
| 初期費用 | 推定中〜高(社内システム接続込) | 推定 80〜200万円(プロンプト設計+RPAシナリオ構築+データ接続) |
| 体制 | 社内開発+業務部門連携想定 | 兼任のAI推進担当1名+外部支援月10〜20時間 |
| 期間 | (不明・公開時点で運用済) | 2〜4ヶ月でPoC→半年で本格運用 |
評価軸スコア
| 評価軸 | スコア |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | ★★★★☆ |
| 再現性(中小企業) | ★★★☆☆ |
| 難易度(低いほど簡単) | ★★★★☆ |
(難易度=数字が小さいほど簡単)
スコア根拠は以下です。
- ROIが高いのは、月数百件規模でも1件あたり数分の短縮が年単位で積み上がるため
- 再現性は中程度。「件数が多く形が決まっている文書業務」を持つ会社に限定される
- 難易度は高め。生成AIプロンプト設計だけでなく、RPAでのデータ接続まで含むと初期構築コストが膨らむ
前提条件・必要データ
- 月200件以上の定型文書(求人原稿・物件文・商品説明など)が発生している
- 元データが構造化されている(求人票・商品マスタ等のCSV/DB)
- 文書品質の判断基準が言語化できている(または例文サンプルが豊富にある)
- RPA構築に関わる外部支援か社内人材がいる
失敗条件・適用しないケース
- 月数十件しか定型文書がなく、自動化する投資対効果が出ない
- 元データが紙やExcelの非構造化状態で、RPA接続のコストが膨張する
- 「AIに全文書かせて、人間チェックをスキップ」する運用で品質が崩れる
- プロンプト設計を軽視して、Difyの初期ワークフローのまま運用する
「Difyを入れれば求人原稿が自動で書ける」わけではありません。
元データの構造化→プロンプト設計→RPAでデータ受け渡し→生成AIで下書き→人間が確認・入稿、の5ステップを踏んで初めて、年単位の削減時間が見えてきます。
「生成AI単体で完結」ではなく「RPA+生成AI+人間チェック」のパイプラインで設計する点が、再現の肝です。
出典・参考
市野
愛知県岡崎市でAI活用支援を手がける一人社長。 中小企業の現場でAIを実装してきた経験から、他社事例を「うちで再現するには」の視点で読み解いて発信中。
